教育投資が健康に与える影響とは – 闇医者Blog
昨今では、記録的な日経平均の上昇や新NISAの影響で「投資」に関心を持つ方が増えています。
合わせて、老齢年金や子育て支援金、政府の裏金問題で「お金」への関心が過剰に進んでいます。
もちろん、現役世代は老後に十分な生活ができるように、ご自身で考えて、長期的に資産の形成を検討することは重要だと思います。
一方で、目で見えない資産、「健康」や「寿命」への「投資」は果たして出来ているのでしょうか?
今回は、「投資」を医学的な観点から解説したいと思います。
「Graf GHJ, Aiello AE, Caspi A, et al. Educational Mobility, Pace of Aging, and Lifespan Among Participants in the Framingham Heart Study. JAMA Netw Open. 2024 Mar 4;7(3):e240655」を元に参考文献を孫引して調べております。
「教育」への投資は、個人や社会の発展に多くの利点をもたらすだけでなく、健康にも大きな影響を与えることが研究によって示されています。
教育のレベルが高い人々は、一般的に健康な生活を送り、長寿につながる可能性が高いとされており、その理由には、以下のような要因が考えられます。
1. 健康への知識と理解:健康を維持するための適切な行動を取る
2. 健康へのアクセス:職場での健康プログラムへの参加の機会が多い
3. 社会的・経済的安定:精神的な健康に良い
4. 社会的つながりとサポート:一般的に社会的なつながりが豊富
加齢に関連した病気の罹患率が低く、病気の発症年齢が遅くなることが、実際に、「心臓病」「糖尿病」「がん」「アルツハイマー病」などほぼすべての臓器系や老化関連疾患で明らかにされています。
また、教育格差が低い日本においても、「年齢調整死亡率」では、
・大学以上卒業者に比べ、中学卒業者は男性1.36倍、女性1.46倍、死亡率が高い
・大学以上卒業者に比べ、高校卒業者は男性1.16倍、女性1.23倍、死亡率が高い
死因別では、ほとんどの死因で教育歴が短い群が高いとされています。
この論文では、「教育への投資」や「老化」を定量化する指標を
「教育への投資」=「教育の流動性」:親と比較してどれだけ学業に励んだか
「老化」=「全血のメチル化DNA」
として、性別などで標準化して報告しています。
結果としては、「教育の流動性」=「教育への投資」が高いほど、「老化」のペースが有意に減少しており、死亡リスクの低下と関連していました。
幼少期の貧困などの関連を除外するため、兄弟間での統計を施行しても、結果は同様でした。
ここからは個人的な見解になります。
私は専門とする科の特性上、鎮痛薬を処方することが多いです。
処方された患者さんの中には、「どうせ先生達は痛み止めだけ出して終わりなんでしょ」と言ってこられる方がいます。
逆に、それが目的なだけの患者さんも多いですが、この薬は飲んで終わりの薬ではないことを改めて伝えるようにしています。
「痛みが少しでも軽くなり、少しでも動くことが重要です」
「あくまでも、身体を動かせるように内服するのが目的なので、その先に一歩進みましょう」
と、お薬=「リスク」は健康への投資として考えていただくようにしています。
これは、教育への投資と全く同じ考え方です。
家庭環境は人それぞれだと思いますが、ご自身がどれだけ勉学に励むか、親がどれだけ子供に勉学に向かわせるかは、将来の健康に大きなアドバンテージになると思います。
目に見えない資産を維持するために、いつまでも学ぶ姿勢は忘れないようにしたいですね。
最後になりますが、勉強しておけばそれでいいとも思いません。
学歴社会に則って、とりあえず大学に入るという時代はもう終わってるのではないかと思います。
目的意識を持って、自立した考えを持ち、自分の人生の選択ができる人間が今後は評価される時代が来ることが望ましいとも考えています。
どこかの静岡県知事ではないですが、「職業に貴賎なし」、そんな人達を応援できる日本になってほしいです。
ご意見やご感想、間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい。